2023年の丸紅株主総会では、子会社の動物福祉対応を問いました。
丸紅株主総会と動物福祉問題。質問の要旨、回答の要旨
- 公開されている映像は、実際にウェルファムフーズで撮影されたものなのでしょうか。映像に見られたような方法での殺処分を現在も行っているのですか。それとも、すでに人道的な方法へ切り替えられているのでしょうか。
仮にガス殺処分を行っているとしても、科学的に苦痛が大きいとされている二酸化炭素ガスではなく、イギリスなどで実用されているアルゴンガスの使用に切り替えているのでしょうか。 -
- ウェルファムフーズは、動物福祉に十分配慮していると認識しています。鶏舎ではボイラーを稼働させ、必要に応じて暖房なども使用しています。動物の扱いについて、改善の余地がまったくないとは考えていませんが、現時点では最善の取り組みを行っていると認識しています。
- 食料第二セグメントに属するCreekstoneをはじめ、当社グループでは動物福祉に配慮した事業運営を行っています。鶏のみならず、牛についても同様に配慮しています。
- ウェルファムフーズは、動物福祉に十分配慮していると認識しています。鶏舎ではボイラーを稼働させ、必要に応じて暖房なども使用しています。動物の扱いについて、改善の余地がまったくないとは考えていませんが、現時点では最善の取り組みを行っていると認識しています。
- アルゴンガスの使用について言及がなかったため、後日本社に質問しました。
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- ウェルファムフーズでは、アルゴンガスを使用したプロセスを採用しており、ヒナに苦痛を与えないよう最大限の配慮を行っています。
- 今後も当社グループの関連事業において、アニマルウェルフェアに適切に配慮した経営を行っていきます。
- ウェルファムフーズでは、アルゴンガスを使用したプロセスを採用しており、ヒナに苦痛を与えないよう最大限の配慮を行っています。
補足解説:ガスによる殺処分方法について
ガス殺処分であっても、すべてが人道的とは限りません。鳥インフルエンザ時に見られるような、容器に無造作に鶏を入れ、二酸化炭素を注入する方法は、科学的に苦痛が大きいことが明らかになっており、非人道的とされています。
一方、産業レベルで実用可能とされる、比較的苦痛の少ない方法は、酸素濃度を1%以下まで下げたアルゴンガスを使用する方法です。これは二酸化炭素単体のような強い嫌悪感を与えにくく、濃度管理ができ、鶏の様子を観察できる専用設備を必要とします。イギリスでは、ヒナの殺処分にアルゴンガスが使用されています。
丸紅の動物福祉に対する姿勢
丸紅は、ESG評価の一環として、連結子会社を対象としたサステナビリティ調査を行い、その中に動物福祉も含めています。公式サイトでは、食料第二セグメントに属するCreekstoneやHelena Agri-Enterprisesなどについては、動物福祉に配慮した事業運営を行っていると記載されています。
その一方で、ウェルファムフーズについての具体的な動物福祉方針や実践内容は明示されておらず、情報開示の点では課題が残ります。
親会社と子会社のリスク関係
子会社の動物虐待は、親会社の企業価値にも直接影響を与えます。
例えば、ウォルマートでは、サプライヤー企業カル・メイン・フーズの「オーガニック卵」に関して、実態と異なる表示をめぐって集団訴訟が発生しました。
また、アメリカのマクドナルドでは、鶏肉サプライヤーの従業員による虐待行為の映像公開を受け、2015年に当該業者との取引停止を発表しています
内部告発
ウェルファムフーズについての内部告発についてはこちら
考察
本件で最も重要なのは、「配慮している」「最善の取り組みをしている」という表現が繰り返される一方で、その内容が具体的に示されていない点です。殺処分方法のように科学的評価が比較的進んでいる分野においても、どの手法を、どの範囲で、どの設備で行っているのかについての説明は限定的でした。
後日の本社回答でアルゴンガスの使用が明言された点は前進といえますが、総会で即答されなかったことから、グループ内での情報共有体制や統一方針の不十分さも示唆されます。
また、丸紅はESG評価に動物福祉を組み込んでいるとしながら、子会社ごとの具体的な水準や基準、改善計画を開示していない点にも課題があります。ESGは「評価項目」ではなく、「経営管理そのもの」です。定性的な言及にとどまらず、基準・監査・是正プロセスを可視化しなければ、実効性は担保されません。
今後の論点
今後の対話において重要なのは、以下の点です。
- ウェルファムフーズにおける動物福祉基準を、丸紅グループとして文書化しているのか
- 殺処分方法について、アルゴンガス使用が標準方針になっているのか
- 鳥インフルエンザなどの非常時にも、非人道的手法を使わない仕組みが整備されているのか
- 子会社の動物福祉を、どの頻度で、どの基準で監査しているのか
- 問題があった場合、親会社としてどのように是正を求めているのか
「配慮している」という言葉を、運用ルールと数値管理のある社会的説明責任へと引き上げられるかが、今後の焦点になります。

