2023年のキユーピー株主総会では、動物福祉とケージフリー卵の調達方針について質問しました。
2023年キューピー株主総会で現場での確認方法、ケージフリー目標設定について質問(要旨)
キユーピーでは、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理指針に基づいて卵を調達していると説明されていますが、国内では、病気の鶏が放置されて死んでいる、不適切な殺処分が行われているといった報告もあります。こうした問題が実際に起きていないかを、御社として現場でどのように確認しているのかを教えてください。
また、アメリカでは2025年までにケージフリー化を進める方針を示している一方で、日本では具体的な期限や数値目標が示されていません。日本でも同様の目標を設定できない理由と、今後の見通しについて教えてください。
キューピーの回答の要旨
アニマルウェルフェアは、品質、環境配慮、人権と並ぶ重要な課題として位置づけています。
国内の養鶏場とは「鶏卵品質規格書」を取り交わし、農林水産省の「飼養管理指針」の遵守状況について、アンケート形式で確認しています。
現地での監査については、鳥インフルエンザなどの感染症リスクもあり、すべての養鶏場を常時監査することは難しい状況です。ただし、計画を立てて数年単位で実地監査を実施しており、今後も継続して行っていく予定です。
殺処分の方法についても、現地調査や規格書締結時のヒアリングを通じて、適切に行われているか確認しています。
海外については、各国・地域の法令に従って調達しており、アメリカ(カリフォルニア州)の子会社では、州法に基づきケージフリー卵を調達しています。
日本でケージフリー化が進まない理由としては、気候が温暖湿潤で飼育管理が難しいこと、国土が狭く設備面に制約があること、加えて日本全体のケージフリー率が約5%と低く、安定的な調達が難しいことを挙げています。
今後は、農林水産省などの行政や業界関係者と情報交換を行いながら、継続的にアニマルウェルフェアの向上に取り組んでいくとしています。
補足:内部告発
考察
キユーピーの回答は、現場確認の仕組みや、調達基準の枠組みについて比較的具体的に説明されており、「何もしていない」という水準ではないことが読み取れます。一方で、その多くが自己申告型の確認方法(アンケート・ヒアリング)に依存している点は、客観性という観点で課題が残ります。
実地監査についても「数年かけて」という表現にとどまり、頻度や対象範囲は明示されていませんでした。監査を行っているという事実と、その実効性は別問題であり、どの程度の密度で監査が実施されているのかは、今後の重要な検証ポイントとなります。
また、日本でケージフリー化が進まない理由として挙げられた「気候」「国土」「供給量」は現実的な要因ではありますが、海外と比較しても設備投資によって克服されている事例があることから、「不可能」ではなく「コストと優先順位の問題」である可能性もあります。
アメリカでは期限を設定し、日本では設定していない点は、「法規制があるかどうか」が企業行動に大きく影響していることを物語っています。倫理的配慮よりも、法的・取引上の要請が強い場合に対応が進むという構図が浮き彫りです。
今後の論点
今後は、以下の点についての具体化が焦点となるでしょう。
- アンケートやヒアリングに代わる、第三者監査」の導入予定はあるのか
- 実地監査の頻度・対象割合を公開する考えはあるのか
- 日本国内におけるケージフリー化の中長期目標は設定されるのか
- 動物福祉違反が発覚した場合の是正措置は明文化されているのか
回答内容は一定の情報量を持っていますが、それが実効性を伴っているかどうかを評価できる材料は、まだ十分とは言えません。今後は「仕組み」から「結果」へと、説明の水準が引き上げられるかが重要なポイントになります。

