World Grainに掲載された記事「Poultry growth drives Al-Hazaa feed mill expansion」は、ヨルダンのAl-Hazaa Investment Groupによる飼料工場拡張の動きを紹介しています。 背景には、同国で急成長する家禽産業と、それに支えられた飼料工場の安定した高成長があります。
本記事では、このプロジェクトの背景や設備の特徴に加え、サステナビリティや今後の課題についても整理してご紹介します。
ヨルダンで急成長する家禽産業を支える Al-Hazaa Investment Group の飼料工場拡張
ヨルダンの製粉・飼料大手 Al-Hazaa Investment Group は、急速に拡大する国内の家禽(ブロイラー)産業の需要に応えるため、アンマン南部にある飼料工場に 第3のペレットライン を導入しました。これにより、同工場の総生産能力は 時速50トン に拡大。ブロイラーを中心とした家禽向け飼料の高品質化と安定供給を目指すほか、年間20%を超える成長を背景に、今後の事業拡大や海外展開にも意欲を示しています。
家禽産業の急成長と投資の背景
ヨルダンでは、近年の技術革新と規模拡大を背景に、家禽産業が顕著に成長しています。鶏肉は同国および中東地域で重要なたんぱく源となっており、その需要拡大が飼料生産への旺盛な投資を促しています。Al-Hazaa グループは、地域の畜産業の競争力と食料安全保障を支えるため、「高品質な飼料を安定的に供給する」という明確なビジョンを掲げ、長期的視点で設備投資を進めています。
最新設備と技術パートナーシップ
今回の拡張プロジェクトでは、スイスの技術大手 Bühler(ビュラー)社 が設備一式を提供し、エネルギー効率・自動化・品質管理を大幅に向上させました。
導入された主な技術には次のような特徴があります。
- 水分検査機能付きミキサー による品質管理の強化
- 高耐久のペレットプレス・グラインダー による長寿命化と安定生産
- 省エネ設計の水平配置ライン による建設コスト削減
- 自動化・デジタル監視システム による操業の安定性とトレーサビリティの確保
これらによって、栄養組成や粒度の均一化など、家禽の成長効率を最大化する生産体制を実現しています。
ヨルダンにおける畜産動物福祉の現状 <ヨルダンにおける畜産動物福祉の現状>については、記事からではなく、ヘルプアニマルズでまとめた内容になります。
ヨルダンでは、2010年に「動物福祉規則(Animal Welfare Regulation No.11/2010)」が制定され、動物の不必要な苦痛の禁止や適切な給餌・給水などの一般原則が定められています(*1)。また、2020年代に入ってからは、輸送や取り扱いなどに関する追加的なインストラクションが官報で公表されるなど、法制度の整備が段階的に進められていると報じられています(*2)(*3)。
一方で、ブロイラー産業に関しては、欧州連合(EU)のように「飼育密度の上限」や「屠殺前の取り扱い方法」を数値や手順として詳細に定めた国内法は、公開されている資料からは確認できません。そのため、実際の飼育環境や管理水準には農場ごとのばらつきが存在すると考えられます。
国際獣疫事務局(WOAH)や国連食糧農業機関(FAO)の中東地域向け活動では、動物輸送や屠殺時の福祉確保が重要課題として位置づけられており、国際基準の実装支援が進められていますが、ヨルダン単独の詳細な実態調査データは限られています(*4)。
家禽産業が急速に拡大する中で、飼料供給や生産効率の向上と並行して、動物福祉の観点からの改善も重要な課題となっています。今後は、国際基準に沿った飼育密度の管理、輸送時のストレス軽減、屠殺場におけるハンドリング改善などが、産業の持続可能性と社会的受容性の両面から重要なテーマになると考えられます。
ヨルダンのブロイラー飼育密度(推定的な位置づけ)
ヨルダンでは、公開されている法令や官報資料の中に、「ブロイラー飼育密度の上限」を数値として明示した規定は確認されていません(*1)。そのため、具体的な飼育密度については公式統計が存在せず、国際機関の一般的な指針や中東地域における商業的慣行を参考に推測されるにとどまっています(*4)。
一般に、高密度飼育としては 35〜45kg/m² 程度、場合によってはそれ以上の飼育密度が国際的な研究で検討されており(国・地域を限定しない一般研究)(*6)、中東地域でも同様の高密度・短期肥育モデルが用いられているとする報告があります(*4)
■ 推定される飼育密度
国際的には、商業的なブロイラー生産において35 kg/m²前後の飼育密度が一般的に用いられるケースが多いとされていますが、ヨルダン国内における平均値や上限値を示す公的データは確認されていません。
一部の集約型生産モデルでは、国際的な推奨水準を上回る高密度飼育が行われる可能性も指摘されていますが、これはあくまで一般的傾向に基づく推測です。
■ 参考:国際基準
- EUブロイラー指令では、通常 33kg/m²、条件付きで最大39〜42kg/m² まで認められています(*5)。
- 国際NGO(CIWF等)は、おおむね 30kg/m² 以下を推奨しています(*6)。
■ 解釈
こうした国際基準や推奨値と比較すると、中東地域で一般的な高密度飼育モデルは、歩行障害や行動制限など動物福祉上のリスクが高まりやすい条件だと考えられます(*5)(*6)。ヨルダンの家禽産業も、この地域的な傾向の中に位置づけられる可能性が高いとみられます(*4)。
中東地域の動物福祉基準 比較表
以下は、ヨルダンを含む中東地域の家禽福祉基準を、EUなどの国際基準と比較した表です。
中東地域 × 国際基準:ブロイラー福祉比較表
| 項目 | ヨルダン | サウジアラビア | UAE | EU(参考) |
|---|---|---|---|---|
| 飼育密度の法的上限 | 明確な数値規定なし(推定35〜45 kg/m²)(*1)(*4) | 数値規定なし(*4) | 数値規定なし(*4) | 33 kg/m²(最大42 kg/m²)(*5) |
| 輸送基準 | 2022年規則で基本基準を明記(*2) | 一般基準あり(*4) | 一般基準あり(*4) | 詳細な規定あり(*5) |
| 屠殺基準 | 一般的な取り扱い規定のみ(*1) | ハラール基準中心(*4) | ハラール基準中心(*4) | 事前気絶義務(例外あり)(*5) |
| トレーサビリティ | 一部導入(家畜番号制度)(*1) | 進展中(*4) | 進展中(*4) | ほぼ完全導入(*5) |
| 福祉監査制度 | なし(農業省の監督のみ)(*1) | なし(*4) | なし(*4) | 監査・報告義務あり(*5) |
| 国際基準との整合性 | 部分的(*4) | 部分的(*4) | 部分的(*4) | 高い(*5) |
参照リスト
(*1)Animal Welfare Regulation No.11 of 2010(FAOLEX) https://www.fao.org/faolex/
(*2)Jordan Official Gazette – Animal Welfare Instructions 2022 https://www.gazette.gov.jo/
(*3)Jordan Times – Animal Welfare Regulation Coverage https://www.jordantimes.com/
(*4)WOAH Middle East – Animal Welfare & Transport Reports https://www.woah.org/en/what-we-do/animal-welfare/
(*5)EU Broiler Directive (Council Directive 2007/43/EC) https://eur-lex.europa.eu/
(*6)Compassion in World Farming – Broiler Welfare Recommendations https://www.ciwf.org.uk/
原料調達と課題、環境への配慮
飼料の主原料となるトウモロコシや大豆粕は主に南米(ブラジル・アルゼンチンなど)から輸入されていますが、地政学的リスクや物流の混乱、原料価格の変動 がコストに影響を与えています。とくにロシア・ウクライナ情勢や紅海周辺の輸送不安定化が課題とされています。
その一方で、Al-Hazaa グループは 再生可能エネルギー の導入にも積極的です。2017年には自社施設向けに 16MW規模の太陽光発電所 を稼働させ、年間約13,000トンのCO₂排出削減を実現しています。冬季の発電量低下などの課題はあるものの、持続可能な事業運営に向けた姿勢が鮮明です。
今後の展望と地域的意義
飼料事業は Al-Hazaa グループ全体の約30%を占めており、年間20%以上の高成長を維持しています。企業は今後、近隣国の飼料工場の買収や共同投資 を含む地域展開を視野に、サプライチェーン全体の効率化と品質向上を進める方針です。
同時に、このような高速成長と産業合理化の動きは、動物福祉や環境負荷とのバランス という新たな課題も示唆しています。食料安全保障、産業成長、倫理的・環境的責任の調和が、今後の注目ポイントとなるでしょう。
このように、Al-Hazaa Investment Group の飼料工場拡張は、ヨルダンの家禽産業の発展を象徴する取り組みであり、技術革新と持続可能性の両立を追求する中東地域の最新動向を映し出しています。

