日本国内の牛・豚・鶏肉消費は、ここ数年で微妙な変化が見られます。農林水産省の「食肉鶏卵をめぐる情勢(令和7年8月)」によれば、令和5年度(2023年度相当)の牛・豚・鶏肉合計の1人当たり供給純食料は33.6kg/年で、2021年度の33.8kg/年と比べわずかに減少しています[1]。内訳は鶏肉14.4kg/年、豚肉13.1kg/年、牛肉6.1kg/年となっています。
消費減少の背景には、物価高、節約志向、コロナ禍の影響、輸入価格や為替の変動などがあると考えられます[1][2][3]。牛肉は高級部位が多く価格が高いため、消費への影響が大きい傾向があります。鶏肉は比較的手頃な価格で過去10年間の消費は増加してきましたが、最近は家計購入量が微減しています[2]。アニマルウェルフェア対応商品も市場に広がっていますが、現状では消費減少の主因ではありません[4]。
一方、酪農・畜産の経営環境も厳しさを増しています。2025年1月時点では、酪農家の戸数が1万戸を割る見通しで、経営基盤の弱体化が懸念されています[5]。飼料や資材高騰により約6割の酪農家が赤字で、約5割が離農を検討しているとの調査もあります[5]。搾乳牛1頭あたりの生産費は2023年に前年比2.3%増の103万2,548円となり、特に飼料費が上昇しています[6]。
政策対応として、2025年度の農林関係予算では酪農経営安定化策に約444億円が計上され、国産飼料の生産・利用拡大を支援する新規事業に55.8億円を割り当てています[6]。新規就農者向け支援も107億円確保され、加工原料乳に対する生産者補給金単価も17銭引き上げられ、1kgあたり9円9銭となりました[6]。これらの施策は生産者収益の安定化を狙ったものです。
しかし、2025年1〜7月の期間で酪農業の倒産件数は10件と過去最多を記録し、飼料・人件費高騰、後継者不足、高齢化など構造的問題が背景にあります[7]。農林水産省は2030年度の生乳生産目標を732万トン、牛肉は51万トンとし、需給ギャップの解消を優先する方針を示しています[8]。長期的には生乳780万トン、牛肉53万トンを目標とし、持続可能な生産基盤構築が課題です。
総括すると、日本の畜産・酪農は、物価高や消費動向の変化による食肉需要の微減、酪農経営のコスト高・収益性低下・離農増加という厳しい現実に直面しています。政策面では補給金や予算支援、国産飼料の強化などが行われていますが、離農抑制と持続可能な生産基盤の構築には、より実効的な手立てが求められます。
参照リスト
NOSAI「生乳・牛肉の需給見通し」https://www.nosai.or.jp
農林水産省「食肉鶏卵をめぐる情勢(令和7年8月)」https://www.maff.go.jp/j/chikusan/shokuniku/lin/attach/pdf/index-491.pdf
農畜産業振興機構(ALIC)「家計食肉消費調査(令和4年度)」https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002724.html
食肉流通標準化システム協議会「物価上昇下の食肉販売動向」https://www.piif.jmtc.or.jp/wp-content/uploads/2025/07/03-物価上昇下の食肉販売報告20250627.pdf
農林水産省「アニマルウェルフェア対応畜産物について」https://www.maff.go.jp/j/chikusan/syokuryo/animal_welfare.html
JAcom「酪農家の経営状況と離農傾向」https://www.jacom.or.jp
rakunou.org「酪農経営のコストと政策支援」https://www.rakunou.org
TSRネット「酪農業倒産件数」https://www.tsr-net.co.jp

