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動物福祉ニュース (2025年11月末〜12月初旬)

ニュース

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米NIHが「猫実験廃止方針」と矛盾する研究資金を提供

米国の国立衛生研究所(NIH)が、猫・犬の実験を段階的に廃止すると表明していたにもかかわらず、猫を用いた新規実験プロジェクトに約170万ドルの資金を提供していたことが、民間監視団体White Coat Waste Projectの調査により判明しました。研究内容には、子猫に対する侵襲的脳実験やウイルス投与、最終的な安楽死を含む計画もあり、国際的な批判が広がっています(*1)。

◆ 視点:日本にとっての意味

この問題の本質は「猫の実験」ではありません。
方針と実態が乖離している国家研究機関」という点にこそ危険があります。

日本にも同様の構造的課題があります。

  • 指針はあるが拘束力が弱い
  • 倫理審査が内部機関に閉じている
  • 研究費配分と動物福祉政策が連動していない

とくに、日本で進むSCARDAや「100日ワクチン構想」のような“緊急性を伴う研究”は、動物福祉が最も後回しにされやすい領域です。
NIHの混乱は、日本にとって将来起こりうる制度不全の予告編といえるかもしれません。


エキゾチックペットの国際取引規制強化へ(CITES)

野生動植物の国際取引を管理するCITES(ワシントン条約)において、イグアナ、カメ、ナマケモノ、タランチュラなどのエキゾチックペット対象種について、国際取引の厳格規制や新規掲載の提案が行われました。SNSやECサイトを通じた密輸・違法売買の急増が背景にあります(*2)。

◆ 視点:日本は「密輸の終着点」になりうる

日本はエキゾチックアニマルの流通において、国際的に見ても規制が緩い国の一つです。

  • 国内販売はほぼ自己申告制
  • 輸入後の追跡管理が弱い
  • 飼育者責任・販売者責任が曖昧

CITESの動きは「動物愛護」の問題ではなく、国境犯罪・感染症リスク・生態系破壊の防止という「国家安全保障レベル」の話に移行しています。

日本がこの流れに乗らなければ:

  • 密輸動物の受け皿になる
  • 国際的ブラックマーケットの中継地になる
  • ペット由来感染症の温床になる

つまり、日本の現状は「趣味の問題」ではなく、危機管理の問題になっています。


ポーランド、毛皮農場を全面禁止へ

欧州最大級の毛皮生産国であったポーランドが、毛皮農場を全面的に禁止する法律に正式署名しました。これによりEU加盟国で18番目の毛皮生産禁止国となり、ヨーロッパにおける毛皮産業は事実上「終焉期」に入りつつあります(*3)。

◆ 視点:日本は「世界最後の毛皮大国」になりかねない

欧州では:

  • 産業として違法化
  • 倫理問題として整理
  • 公衆衛生リスクも重視

という形で「制度的に終わった産業」になっています。

一方で日本は:

  • 販売は縮小している
  • 世論は冷めている
  • しかし法律は未整備

という、「市場は縮小し、制度だけが残っている状態」です。

このままでは日本は、

法的にはOK
倫理的にはNG
国際的には浮いた存在

という、最も不利なポジションに立たされ続けます。


インド、路上犬を「終生保護」する制度を導入

インドでは、裁判所の判断と新ガイドラインにより、公共機関で捕獲された路上犬を「終生シェルターで保護し、ワクチン接種・食事提供・避妊去勢を義務付ける」制度が施行されました(*4)。

◆ 視点:日本の殺処分行政と思想の隔たり

インドの判断は、単なる愛護政策ではありません。

その根底にあるのは、

捕まえた命は、行政が一生の責任を負う

という、国家としての倫理宣言です。

日本では、

  • 殺処分減少=問題解決
  • 「処分しないために手放す」行政
  • 財政難を理由に制度改革を見送る

という構造が長年続いています。

インドの事例は、

命はコストではない

という哲学を、国家が公式に引き受けた例です。


動物救出活動で実刑判決(米カリフォルニア州)

米カリフォルニア州で、養鶏場から鶏を救出した動物権活動家が、不法侵入などの罪で実刑判決と高額な賠償命令を受けました(*5)。

◆ 視点:動物福祉は「市民的不服従」の段階に入った

この事件は、「活動家が処罰された」のではありません。

「動物福祉が、ついに刑法と衝突した」という意味を持ちます。

つまり、

  • 動物福祉が単なるキャンペーンの領域を超えた
  • 民事ではなく刑事事件のテーマになった
  • やがて憲法思想に突入する段階に入った

ということです。

日本では現時点で、同様の事案が大きな社会問題として可視化されているとは言えませんが、これは問題の規模を直接反映しているとは限らず、制度や運用のあり方によって表に出にくくなっている可能性も考えられます。


総括:動物福祉をめぐる国際的な動きと日本への示唆

今回紹介した事例からは、動物福祉の問題が、単に感情や個人の価値観の問題にとどまらず、制度設計や行政のあり方、企業の責任とも深く関わるテーマになってきていることがうかがえます。

参照リスト

  1. NIH funds new cat experiments despite pledge to phase them out / The Guardian
    https://www.theguardian.com/world/2025/dec/03/nih-funds-cat-experiments
  2. The growing exotic pet trade drives illegal sales online and a push for tighter rules / AP News
    https://apnews.com/article/3db6781c7a70b479d7087e899bd7aee5
  3. Poland’s president signs fur farming ban / Humane World for Animals
    https://www.humaneworld.org/en/news/polands-president-signs-fur-farming-ban
  4. Care mandate kicks in: Lifetime shelter, food, vax for captured stray dogs / Times of India
    https://timesofindia.indiatimes.com/city/bengaluru/care-mandate-kicks-in-lifetime-shelter-food-vax-for-captured-stray-dogs/articleshow/125702833.cms
  5. UC Berkeley animal rights activist to serve jail time after ‘chicken rescue’ conviction / San Francisco Chronicle
    https://www.sfchronicle.com/bayarea/article/zoe-rosenberg-chicken-trial-jail-time-21216825.php
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