近年、動物福祉の観点から世界各地でさまざまな変化が起こっています。なかでも アメリカでの毛皮農場からの動物救出活動 と、 韓国で進行中の食用犬産業の段階的廃止と救出活動 は、動物の命を救うという視点から注目されています。本記事では、これらの最新動向について詳しくお伝えするとともに、現在進行形の救出活動とその背景にある社会的な潮流について考察します。
アメリカ:毛皮農場からの大量救出とその後
現場の状況と救出の実態
2025年初頭、米国オハイオ州アシュタブラー郡にある Grand River Fur Exchange(毛皮用動物の飼育施設) において、数百頭にのぼる動物たちが劣悪な環境で飼育されていることが発覚しました。この施設は毛皮製品や尿を目的に、キツネやアライグマ、オオカミ雑種、スカンク、コヨーテなど多種多様な動物を狭いケージに閉じ込め、過酷な環境下で扱っていました(*1)。(ヘルプアニマルズ注)尿は、他動物の狩猟用誘引剤として使われます。
救援活動は米国動物愛護団体 Humane World for Animals(旧Humane Society of the United States) とオハイオ州当局によって実施され、数百頭もの動物が救出されました(*1)(*2)。救出された動物たちは栄養失調や凍傷など身体的にも精神的にも深刻なダメージを受けていましたが、救助隊によって一頭一頭がケアされました。
新しい生活への一歩
救出された動物のうち、赤キツネ2頭(Sadie と Seth)は フロリダ州タンパにある ZooTampa at Lowry Park に迎え入れられ、新しい「永遠の家」を得ました(*2)。この動物園では獣医とケアチームが彼らの健康状態を評価し、隔離期間を経て、新生活に向けた調整を行いました(*2)。Sadie と Seth のように、救出後も安全な環境でリハビリを受けることで、これまでの過酷な生活から解放され、穏やかな日々が始まっています。
継続する支援と課題
救出された動物たちのケアは一時的な措置ではなく、 長期にわたるサポートが必要 です。動物たちは過酷な環境での生活から解放されたものの、健康や行動の面で専門的なケアを必要としています。また、多くの動物保護団体やサンクチュアリが受け入れ体制の拡充を求めています。
例えばインディアナ州にある Black Pine Animal Sanctuary は、救出されたキツネたちの新たな住まいの建設や、今後同様に救助される可能性のある動物たちへの受け入れ拡大を目指しています(*3)。こうした現場の取り組みから、単発の救出ではなく、 動物福祉を重視した包括的な救助後支援 の重要性が浮き彫りになっています。
韓国:食用犬産業の廃止へ向けた救出と転換
犬肉産業廃止法の制定
韓国では 2024年1月に「犬肉産業の段階的廃止を定めた特別法(Special Act on the Termination of Breeding, Slaughter and Distribution of Dogs for Consumption)。いわゆる“Dog Meat Prohibition Act”」 が国会で可決され、2027年に完全施行されることが決まりました(*8)。これにより、犬の飼育、屠殺、販売が法律として禁止され、違反者には刑罰も科される見込みです(*8)。(ヘルプアニマルズ注:消費は違法化されません)
この法律は国内外の動物福祉団体の長年の活動の成果であり、多くの市民が動物の苦しみに対して関心を持つようになってきたことを背景として成立しました。しかし法律の施行までには猶予期間があり、現在は段階的に犬肉産業が縮小していく過程にあります(*4)。
飼育農場の閉鎖と救出活動
政府の統計によれば、 2025年12月時点で全国の犬肉用飼育農場のおよそ78%がすでに閉鎖 されており、多くの農場主が業務を停止しています(*4)(*5)。この動きは法律の施行を控えた事前の段階的廃止の一環であり、 動物福祉意識の高まりと政府の支援策 によって進んでいます(*4)。
しかし、農場閉鎖が進む一方で、閉鎖時に行き場を失ってしまう犬たちへの対応が大きな課題です。こうした中で、国際的な動物保護団体 Humane World for Animals は、韓国国内で犬肉用犬の救出活動を実施しています。団体はこれまでに何十軒もの農場から 2,700頭以上の犬を救出 するとともに、 アメリカやヨーロッパ諸国などへ移送し新しい家族を探す活動 を行っています(*6)。
さらに 韓国人俳優ダニエル・ヘニー もこの救出活動に参加しており、チェオンジュ(Cheongju)の犬肉農場で67頭の犬が救出され、 米国など海外での里親探し に向けて移送された事例があります(*7)。この救出は、韓国国内での法律施行が進む中での重要な転換点となっています。
取り残された課題と必要な支援
犬肉産業の廃止に向けた流れは進んでいますが、全ての犬を救出し、新しい家族へとつなぐためにはまだ多くの時間と資源が必要です。救出された犬たちの中には健康状態が悪く、 専門的な治療やリハビリを必要としているケース もあるため、国内外の動物保護団体やボランティアの支援が欠かせません。
韓国国内のシェルターは既に多くの犬を受け入れており、一部の団体は 国際的な里親探しプログラムを展開 しているものの、需要と供給のバランスは非常に厳しい状況です(*6)。
救出活動の社会的意味と国際的潮流
毛皮産業と動物福祉の視点
毛皮農場からの救出は、単に一時的に動物を救うという行為ではなく、 動物福祉全体に対する社会意識の変化を反映しています。グローバル化した社会では、倫理的な消費や動物の苦しみに対する理解が深まりつつあり、 毛皮製品の需要低下やファッション業界での毛皮禁止 の動きも広がっています(*1)。救出された動物のケアが進むにつれて、社会全体で「苦しむ動物を助ける」という価値観が共有されつつあります。
食用犬産業の段階的廃止と動物権利の進展
韓国の犬肉産業廃止法は、単なる産業の終了だけでなく、 伝統的な食文化と現代的な動物福祉観の衝突とその調整 を象徴しています。法律施行に向けて多くの農場が閉鎖されていることは、社会全体が動物の扱いについて考える大きなきっかけになっています(*4)。
救出された犬たちが新しい家族と出会い、新生活をスタートさせる様子は、単なる救出ニュースにとどまらず、 動物の尊厳に向けた世界的な潮流の一端 でもあります。
まとめ:救出活動が示す未来への希望
ここ数年で、アメリカの毛皮農場からの大量救出と、韓国の食用犬産業からの救出活動は、 「動物を苦しみから解放する」という理念が着実に社会に根付きつつあること を示しています。救助活動は簡単なものではありませんが、命を救う人々の努力と社会の意識変化が結びつくことで、よりよい未来が形成されつつあります。
私たち一人ひとりが 動物福祉について考え、行動すること は、これからの社会を形づくる重要な要素です。救出された動物たちの新しい生活は、まだ始まったばかりですが、それは確かに希望の兆しであり、世界中の動物福祉の未来を照らす光となることでしょう。
参照リスト
- Hundreds of foxes, raccoons, wolf-dogs rescued from fur farm in Ohio|World Animal News
https://worldanimalnews.com/2025/01/27/hundreds-of-foxes-raccoons-wolf-dogs-skunks-coyotes-rescued-from-fur-farm-in-ohio/ - ZooTampa becomes new forever home for two red foxes rescued from Ohio fur farm|ZooTampa
https://www.aza.org/connect-stories/stories/zootampa-becomes-new-forever-home-for-two-red-foxes-rescued-from-ohio-fur-farm - Black Pine Animal Sanctuary rescues foxes from condemned fur farm|Black Pine Animal Sanctuary
https://www.bpsanctuary.org/news/ - Nearly 80% of South Korea’s dog meat farms shut ahead of 2027 ban|Asia News Network
https://asianews.network/nearly-80-of-south-koreas-dog-meat-farms-shut-ahead-of-2027-ban/ - Nearly 80% of dog meat vendors in Korea have closed|The Korea Times
https://www.koreatimes.co.kr/business/20251228/nearly-80-of-dog-meat-vendors-in-korea-have-closed - Humane World for Animals rescues dogs from closed dog meat farms in South Korea
https://www.humaneworld.org/en/all-animals/inside-south-korea-dog-meat-farm-rescue - Actor Daniel Henney joins rescue of dogs from South Korea dog meat farm|Humane World for Animals
https://www.humaneworld.org/en/news/actor-daniel-henney-joins-humane-world-for-animals-rescue-dog-meat-farm-south-korea - South Korea finally passes historic ban on dog meat industry|TIME
https://time.com/6553409/south-korea-passes-dog-meat-trade-ban/

