2026年1月、米国の環境保護庁(EPA)が哺乳類を用いた動物実験の段階的廃止を改めて表明し、2035年の完全撤廃を目標に据える方針を打ち出しました(*1)(*2)。これは、バイデン政権下でいったん撤回されていた「動物実験の段階的廃止期限」を再び前進させる動きでもあります(*1)。欧米や日本でも科学・政策・企業戦略の面で大きな反響が予想されており、この記事ではその国際的な意味と今後の展望をわかりやすく整理します。
EPAの政策転換の背景と内容(米国)
EPAは2026年1月、哺乳類(犬・ウサギ・ラットなど)を対象とした動物実験の廃止を再宣言し、非動物代替法の開発・活用を優先する方針を打ち出しました。これには、非動物試験法(New Approach Methods:NAMs)を用いる科学的基盤の強化も含まれています(*3)(*4)。
EPA長官の声明にも見られるように、米国政府内の政治的な動きや過去の方針変更が政策の背景にあります。2035年目標は、2019年に一度設定されたものですが、過去の政権変更でいったん棚上げされていた取り組みが、再び進められている状況です(*5)(*6)。
2025年1月に発足した新政権のもと、EPAのリー・ゼルディン長官は、前政権で停滞していた「動物実験の廃止計画」を再び軌道に乗せることを決断しました。これは、2019年に掲げられた「2035年までの完全撤廃」という野心的な目標を改めて公式に認めたものです。
この方針が世界にもたらすインパクト
🔹 科学的潮流としての国際的な示唆
米EPAによる廃止方針は、政府機関が国として動物実験廃止と代替法重視の方向を明確に示したという点で国際的なシグナル効果が高いです。これが規制当局間の議論や、各国の安全性評価の標準化議論に影響を与える可能性があります。
特に国際的に化学物質安全性評価データの相互承認の仕組み(OECDなど)を整えるうえで、非動物試験法の採用が重視される可能性が高まります。
日本国内の政策・研究への刺激
日本では、動物実験の3R(削減・改善・代替)の推進や代替法評価センター(JaCVAM)の活動などがすでに進んでいますが、米国の政策転換は国内当局や研究者、企業にとって代替法の評価・導入を後押しする外的動機付けになる可能性があります(*7)。
たとえば欧米基準に対応した非動物試験法の導入や研究投資の拡大は、国際市場でのデータ受容性を高め、化学物質・医薬品分野での申請戦略にも影響します。
EU(欧州連合)との歩調
EUは既に多数の領域で動物実験廃止・代替法推進の方針を打ち出しており、EPAの動きはこの潮流と一致しているともいえます。欧州委員会やECHAによる安全試験基準の見直し議論においても、EPAの動きが参考にされる可能性があります。
同様の動きは英国を含む他の先進国でも見られており、非動物代替法の技術開発・評価基準の国際整合性が今後の重要なポイントとなるでしょう(*8)。
一部の批判と注意点
EPAの方針には、「代替法では現状十分にリスクを評価できない部分がある」という慎重意見も出ています。環境ワーキンググループ(EWG)などは、非動物試験がまだすべてのリスクを網羅していないとして、科学的な裏付けと規制の枠組み整備を訴えています(*9)。
一方で、環境保護団体EWGなどは「科学的な準備が整わないまま期限だけを優先すれば、有害な化学物質から国民を守る規制が弱まる恐れがある」と警告しています。単なる「動物愛護」の視点だけでなく、「科学的妥当性」をいかに担保するかが今後の焦点となります。
このため、安全性評価と動物福祉の両立をどう進めるかという議論は、今後も国際的な共通課題となります。
まとめ:世界と日本への広がり
| 領域 | 主な影響 |
|---|---|
| 米国(EPA) | 2035年までの動物実験廃止を再宣言(NAMs重視) |
| 国際規制 | OECD基準や国際評価基準への非動物法採用の議論促進 |
| 日本 | 規制評価・試験戦略で非動物試験の導入加速の可能性 |
| EU / 英国 | 動物福祉・科学基準の国際整合性強化の機運 |
EPAの方針は単に国内の方針変更ではなく、世界の化学物質安全性評価や動物福祉政策の潮流に影響を与える可能性がある重要な政策転換点です。
参照リスト
- EPA: What They are Saying: Leaders Across America Applauding EPA’s Action to Eliminate Animal Testing by 2035
→ EPAの公式プレスリリース。EPAが哺乳類実験廃止を表明し、各界の支持・コメントを掲載。
URL:https://www.epa.gov/newsreleases/what-they-are-saying-leaders-across-america-applauding-epas-action-eliminate-animal - Humane World Action Fund: Victory! EPA Renews Plans to Eliminate Animal Testing by 2035
→ 動物福祉団体の立場から見たEPA方針評価。
URL:https://humaneaction.org/press-release/2026/01/victory-epa-renews-plans-eliminate-animal-testing-2035 - EPA: What They are Saying: Leaders Across America Applauding EPA’s Action to Eliminate Animal Testing by 2035
→ EPAの公式プレスリリース。EPAが哺乳類実験廃止を表明し、各界の支持・コメントを掲載。
URL:https://www.epa.gov/newsreleases/what-they-are-saying-leaders-across-america-applauding-epas-action-eliminate-animal - Humane World Action Fund: Victory! EPA Renews Plans to Eliminate Animal Testing by 2035
→ 動物福祉団体の立場から見たEPA方針評価。
URL:https://humaneaction.org/press-release/2026/01/victory-epa-renews-plans-eliminate-animal-testing-2035 - EPA: What They are Saying: Leaders Across America Applauding EPA’s Action to Eliminate Animal Testing by 2035
→ EPAの公式プレスリリース。EPAが哺乳類実験廃止を表明し、各界の支持・コメントを掲載。
URL:https://www.epa.gov/newsreleases/what-they-are-saying-leaders-across-america-applauding-epas-action-eliminate-animal - Humane World Action Fund: Victory! EPA Renews Plans to Eliminate Animal Testing by 2035
→ 動物福祉団体の立場から見たEPA方針評価。
URL:https://humaneaction.org/press-release/2026/01/victory-epa-renews-plans-eliminate-animal-testing-2035 - NITE ケミマガ:EPA関連の化学物質管理情報
→ 日本におけるEPA関連情報の文脈。
URL:https://www.nite.go.jp/chem/chemimaga/fy2024/03-21_719.html - Help Animals:英国の動物実験フェーズアウトロードマップ
→ 欧州側の動物実験関連政策動向。
URL:https://helpanimals-jp.org/uk-animal-testing-phase-out-roadmap/ - EWG Statement on EPA’s Plan to Phase Out Animal Testing by 2035
→ EPA方針に対する懸念と注意点を示す第三者意見。
URL:https://www.ewg.org/news-insights/statement/2026/01/ewg-statement-epas-plan-end-animal-testing

