本ページについて
このページでは、日本および海外の家畜農場を対象とした調査映像をもとに、畜産業界の公式説明や認証制度と、実際の飼育・処理現場との間に存在するギャップを解説します。
アーカイブページで紹介している映像は、偶発的な不祥事ではなく、大量生産を前提とした畜産システムの中で生まれている構造的問題の一部です。
「安全」「安心」「高福祉」という言葉が、どの範囲までを保証し、何を見えなくしているのか。
本ページは、それを考えるための背景資料として位置づけています。
実際の調査映像は、以下のアーカイブページで確認できます。
制度やブランドの説明と現場の映像を見比べながら、構造を立体的に理解してください。
家畜|動画アーカイブを見る
工場畜産(ファクトリーファーミング)とは何か
工場畜産とは、鶏・豚・牛などの家畜を大規模かつ効率的に飼育・出荷する産業型畜産システムを指します。
この方式では、
- 高密度飼育
- コスト削減を最優先した設備設計
- 個体より「単位数」で管理される生産体制
が常態化しています。
その結果、動物福祉よりも、
生産効率・歩留まり・出荷スピード
が重視される構造が生まれています。
「国産」「ブランド」「認証」は何を保証しているのか
食品のパッケージや企業公式サイトでは、
- 国産
- 有名ブランド
- 品質保証
- オリンピック認定
- 国際基準
といった言葉が使われることがあります。
しかし、これらが保証しているのは多くの場合:
- 衛生管理
- トレーサビリティ
- 規格の統一
- 出荷手順の適正化
であり、
動物がどのような環境で暮らし、
どのような扱いを受けてきたか
までを保証しているわけではありません。
「認証」と「動物福祉」はイコールではない
PQA Plus や RSPCA Assured などの認証制度は、
「業界の一定基準を満たしている」
ことを示しますが、それは必ずしも
「動物が苦痛なく、尊重された扱いを受けている」
ことを意味しません。
制度の多くは、
- 管理記録の整備
- 手順の標準化
- 最低限の物理的要件
に重点を置いており、
苦痛を与えないことを目的とした制度ではないという点が、しばしば見落とされています。
証を受けた家畜農場で確認された動物虐待の実例
「認証」や「基準適合」をうたう制度の下にあっても、実際の飼育現場で深刻な動物虐待が確認された事例は、国内外で繰り返し報告されています。以下は、正式な認証を受けていたにもかかわらず、潜入調査や内部告発によって虐待が明らかになった代表的な事例です。
GAP認証農場:Plainville Farms(米国)
アメリカの七面鳥生産大手Plainville Farmsでは、「人道的飼育」を示す GAP(Global Animal Partnership)認証を受けた農場で、従業員が七面鳥を蹴る、投げつける、首を絞めるなどの暴力行為を行っている様子が潜入調査で記録されました。調査後、複数の元従業員が動物虐待罪で有罪となり、同農場の認証は停止されました。この事例は、認証制度が存在していても、日常的な虐待を防げなかったことを示しています。(*1)
Red Tractor認証・Arla供給乳牛農場(英国)
英国の大手乳業メーカーArlaの供給先で、Red Tractor認証を受けていた乳牛農場において、牛が蹴られる、棒や電気ゴードで叩かれるといった虐待映像が公開されました。映像公開後、Arlaは当該農場との取引を停止し、従業員の解雇や調査を実施しましたが、問題の農場は調査直前まで認証を保持していました。(*2)
Red Tractor認証豚農場:Cranswick系列農場(英国)
英国最大級の豚肉企業Cranswickが所有するRed Tractor認証農場では、重度の負傷を負った子豚の放置や、過密飼育による共食い状態が潜入映像で確認されました。これを受けて、TescoやSainsbury’sなど複数の大手小売業者が供給を停止し、認証も剥奪されました。形式上は基準を満たしていたにもかかわらず、深刻な福祉侵害が見過ごされていた事例です。(*3)
RSPCA Assured認証の鶏舎(英国)
「高福祉」を掲げる RSPCA Assured 認証を受けた複数の養鶏場で、過密飼育、負傷した鶏の放置、死体が鶏舎内に残されたままの状態などが潜入調査で明らかになりました。これらの農場は調査時点で認証を保持しており、後に一部が停止・再審査対象となりました。高福祉認証であっても、実態が担保されていない可能性を示しています。(*4)
RSPCA Assured認証の乳牛農場(英国)
同じくRSPCA Assured認証を受けた乳牛農場で、作業員が牛を殴打・蹴るなどの暴力行為を行っている映像が公開されました。認証団体は調査と是正措置を発表しましたが、日常的な監視が十分に機能していなかった点が問題視されています。(*5)
潜入映像は“例外”か?
企業や業界団体は、問題が報道されるとしばしば
「一部の不適切な行為」
「現場担当者の問題」
と説明します。
しかし、
- 国
- 企業
- 認証の種類
を超えて、
類似の映像が継続的に公開されていることは、
「個別の問題」では説明しきれません。
ここで本当に問うべきは:
なぜ同じ問題が繰り返されるのか
なぜ外部からは見えないのか
という、構造の問題です。
このサイトの立場
本サイトは、特定の企業・業界・個人を糾弾することを目的としていません。
動物福祉の観点から、
- 制度
- 表示
- 認証
- ブランド構造
について、考えるための材料を提示しています。
紹介する映像は、感情を煽るためではなく、
消費者が「知ったうえで選択する」ための資料
として位置づけています。
食べること、買うこと、支えること。
その背景に何があるのかを、「見えない構造」から考えるための一助となれば幸いです。
参照リスト
*1
Ex-Plainville Farms Workers Convicted of Animal Cruelty
PETA Investigations
https://investigations.peta.org/plainville-farms-turkey-abuse/
*2
Arla suspends farmer after abuse footage from dairy farm
Farmers Weekly
https://www.fwi.co.uk/livestock/dairy/arla-suspends-farmer-after-abuse-footage-from-dairy-farm
*3
Supermarkets halt supplies from pig farm after cruelty footage
The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2023/aug/17/supermarkets-suspend-supplies-from-pig-farm-after-covert-filming
*4
‘Horror’ revealed at RSPCA Assured farms
The Ecologist
https://theecologist.org/2024/mar/28/horror-rspca-assured-farms-revealed
*5
Investigation: Violence and neglect filmed on UK dairy farm (Madox Farm) – Animal Equality undercover investigation documented and featured on BBC Panorama, revealing abuse and neglect of dairy cows on an assured/Red Tractor-certified farm. Animal Equality, Feb 15 2022. https://animalequality.org/news/2022/02/15/investigation-uk-dairy-farm/
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