目次
はじめに
日本では現在、実験用サルの安定供給を目的とした繁殖体制が、公的事業として維持・強化されています。
一方で、国際的には「サルをいかに確保するか」ではなく、「サルを使わない研究へどう転換するか」という方向へ大きく舵が切られています。
本記事では、日本の実験用サル繁殖体制の現状と、それをめぐる論点を整理します。
実験用サル繁殖体制とは何か
日本では「ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)」の一環として、ニホンザルなどの実験用霊長類の繁殖・供給体制が構築されています。
中核となっているのは、
- 国立自然科学研究機構
- 京都大学などの研究機関
これらの施設では、
- 実験用サルの繁殖
- 遺伝情報の管理
- 健康状態の維持
- 研究機関への供給
が行われています。
繁殖体制が抱える構造的な制約
実験用サルの繁殖には、他の動物にはない難しさがあります。
主な制約:
- 妊娠期間が長い
- 出産数が少ない
- 成熟までに年単位の時間がかかる
- 感染症リスクが高い
- 管理コストが非常に高い
このため、安定供給が難しく、輸入に依存する構造も続いています。
サルはどこから来ているのか
日本で使用されている実験用サルの多くは、
- カンボジア
- ベトナム
- 以前は中国
などから輸入されています。
新型コロナ感染拡大後、中国が輸出を停止したことをきっかけに、
東南アジア諸国への依存が強まりました。
繁殖推進に対する批判
サル繁殖体制に対しては、国内外から次のような批判があります。
主な論点:
- 「サルを増やす」より「使わない」方向に投資すべきではないか
- 繁殖施設の維持費用は代替研究に転用すべき
- 日本は“供給”に偏りすぎている
- 欧米はすでに代替技術へシフトしている
研究機関側の変化
一方で、研究機関側でも一定の変化が見られます。
- 実験の正当性の審査が厳格化
- 飼育環境の改善
- 個体データの管理強化
- AIによる行動解析の導入
など、「より倫理的な研究」への圧力は強まっています。
本当に問われているのは「供給」ではない
焦点は次第に、
❌「どう確保するか」
ではなく
✅「使わずに済ませられないのか」
へ移行しています。
オルガノイドやAI、ヒト組織を使った試験など、
サル実験に代わる技術はすでに実用段階に入っています。
まとめ
日本のサル繁殖体制は、
- 科学的課題
- 倫理的問題
- 国際的評価
- 財政的効率
すべての面で再検討を迫られています。
「繁殖体制を維持すること」が目的となっていないか。
今、最も問われているのはそこです。

